たまには、まったく仕事の役に立たない話を。
クフ王のピラミッドに使われている石は、1個あたり平均2.5トンほどとされています。数字だけ見ると、現場でよく使う25トンクラスのクレーンなら、ずいぶん余裕がありそうに思えます。
ところが、実際に「これでピラミッドを積んでください」と言われたら、たぶん困ります。理由は、私たちが毎日の現場でぶつかっているのと、まったく同じところにありました。
クレーンが吊れる重さは、旋回の中心から荷までの水平距離が遠くなるほど落ちます。近くで吊るなら大きな重さを扱えても、遠くへ差し出すと同じようにはいきません。定格総荷重表のコラムに書いたとおりです。
さて、ピラミッドの一辺は約230メートル、高さは約146メートル(現在は風化して約139メートル)とされています。
てっぺんに石を置くとなると、クレーンはピラミッドの外側に据えることになります。斜面があるので、真横には寄れません。中心までの水平距離は100メートル以上。そのうえ、上へ146メートル持ち上げる。
この条件で2.5トンを吊るとなると、25トンクラスではまったく足りません。100トンクラスでも、この距離と高さは相当に厳しいでしょう。荷の重さは小さいのに、必要な機械は最大級になります。
「重いものを吊るから大きなクレーンが要る」と思われがちですが、実際は遠いから、高いから大きくなることのほうが多いんですよね。ピラミッドは、その極端な例になっています。
平均2.5トンというのはあくまで平均で、大きなものは1個7トンほどあるとされています。
さらに、王の間の天井には花崗岩の巨石が9枚使われていて、これが一つ数十トン。50トンを超えるという説もあります(重さの見立ては資料によって幅があります)。位置はピラミッドの中ほどの高さです。
こちらは重さそのものが大きいので、話がさらに変わります。近くに寄れる条件でも、この重さを扱える機械は限られます。遠さと高さの問題に、重さの問題が乗るわけです。
使われている石の数は、230万個ほどと言われています。
仮に、1回の吊り込みに15分かかるとしましょう。1時間で4個、1日休まず動かして96個。230万個を割ると——24,000日、およそ65年です。夜も休みもなく吊り続けて、この数字になります。
もちろん実際には何台も並べるでしょうし、上へ行くほど石は小さくなるので条件も変わります。それでも、当時の人がどれだけの時間と人を注ぎ込んだのかが、少し想像できる気がします。クレーンがない時代に、です。
ここまで書いておいて何ですが、もし本当に現代でピラミッドを建てるとしたら、外から吊るという発想を取らないかもしれません。
高さのある構造物をつくるとき、機械そのものを構造物と一緒に上げていく方法があります。ビルの工事で上へ上へと上がっていくクレーンを見たことがある方もいるでしょう。あるいは、斜路をつくって運び上げる——古代の人がやったと言われている方法に、結局は戻るのかもしれません。
「どうやって吊るか」より先に、「どこから吊るか」を考える。これは現代の現場でもまったく同じで、私たちがいつも最初に見ているのは、実は荷ではなく据え位置なんです。
| 数字 | 見立て | クレーンの側から見ると |
|---|---|---|
| 石1個 平均2.5トン | 重さだけならそれほどでもない | 近くで吊るなら小型でも足りる |
| 一辺 約230メートル | 中心まで水平距離100メートル以上 | 遠さで吊れる重さが落ちる |
| 高さ 約146メートル | 上へ持ち上げる距離が長い | 高さでも条件が厳しくなる |
| 天井の花崗岩 9枚 | 一つ数十トン | 重さそのものが問題になる |
現代でやるなら、たぶん外からは吊らないでしょう。据え位置から考えるところは、今の現場とまったく同じですね。
数字はいずれも一般に言われている値で、諸説あります。あくまで読み物として。現実の現場のご相談は、トン数の選び方のコラムあたりからどうぞ。ピラミッドでなければ、たいていお役に立てます。
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